まだ鎧を付けていた頃
つい最近まで。
鎧というのは服のことだ。普通の服じゃない。
オシャレだ。ファッションだ。モードだ。ドメスティックブランドの古着屋で買ったパンツだ。
服がすべてだと思った時期があった。
大げさに言ってるんじゃない。服がその日の気分を、自分の価値を、美醜までも、左右すると信じていた。あの頃はそれが唯一無二の真実であった。
いまとなってはあの時の熱を思い出せない。
服なんて恥ずかしいほどダサくなければそれで良いと思う。
少なくともいまは、服は唯一の自己表現の手段ではなくなった。
あの時は、服は私にとってまるで鎧だったのだ。ほんとうの自分よりも強くなれる。重ねれば重ねるほど強い。自分を強くも、可憐にも、自由自在に、演出することができる。
いまは、服よりも大切にしたいものができた。
ファッションフリークだった頃が懐かしいが、それにしても金使いすぎた。