風景描写
昔から、共感はいらんと思っていた。
女子は共感を求めるよね、という意見に対しての反抗であった。
共感なんていらない、ほしいのはあんたの意見だったり、ビシッと解決策を言ってくれることだったり、まあそんなことをずっと思っていた。
根底にあったのは若い女らしい、とカテゴライズされることが反吐が出るほど嫌だったのだ。
でも、あれは良かった、というかぐっときた、という共感がひとつあった。
まだ寒い時期、私は人生で初めて、仕事で悩んでいた。
そして初めて、職場で泣いた。
悔しかった。
泣いている自分がバカバカしかった。
「マイ・インターン」だかで、「職場で泣く女なんて大嫌い」というセリフがあったのだけれど、私もずっとそう思っていた。
人前で泣くなんて、バカな女がすることだ。
私は常に飄々としていたいし、小さいことは気に留めずに、上司からどんな無理なことを言われても根性でなんとかする、肝が座ってて頭の良い奴でいたかった。
でも現実はこうだ。
何一つ自分で満足にできない、トラブルが起こったらおどおどしてしまう。
そんな自分に耐えられずに泣いてしまった。もう、号泣だ。
そんな時、眼の前に座っていたその人もちょっと泣きそうになっていたのが可笑しかった。「分かるよ」そんな簡単に分かるよなんて言うもんじゃない。
でも、きっとこの人は本当にわかるのだ。建前で言っているのか、本気で言っているのかくらい、今の私になら分かる。
あー、この人も今の私と全く同じ気持ちになったことがあるんだろうな、ということが痛いほど伝わってきた。
私もいつか、後輩や部下が自分に絶望して泣いていたら、存分に泣かせてあげたい。
君は間違ってなんかない、それで良いのだ。