忘れる
はやく忘れたい。
でもどうしても、きみと一緒に行った場所を不意に一人で訪れると、きみのことを思い出す。
きみに言われた言葉や、きみと一緒にしたこと、泣いたことや笑ったこと、それらをどっと思い出す。
きみは朝が弱かった。
誰よりも強かった。
きみは泣かなかった。
ほんとうは私の知らないところで泣いていたのかもしれない。
だから私は、きみの前だと存分に泣けたんだ。
離さないと言ってくれたきみから、離れて行ったのは私だった。
もうきみは、私のことを思い出さないだろう。
私も、忘れよう。