靴ずれの痛みは、終わった恋を捨て去るときの痛みなのだ。
最近久々に、9センチもヒールのある靴を買った。
ヒールは良い。
はいて歩くだけで、背筋がしゃんと伸びる。地面を叩く音が、耳に心地良い。
なぜ、ヒールを買ったのかというと最近いいなと思っている人が、私よりも30センチも背が高いからだ。
我ながら、くだらない女である。
そして夕方には、思っていたとおり靴ずれができた。
恵比寿駅までの坂道を登りながら泣いた。この痛みは、終わった恋にさよならするための痛みだ。
前に好きだったひとは、男性にしては背が低かった。
私よりも少し高いくらいの身長で、一重まぶただった。
だから私は、彼の身長を追い越さないようにかかとの低い靴ばかりをはいていた。
カジュアルな彼の隣りにいても浮かないように、デニムばかりはいていた。
彼が好きだったOasisやEmbraceを貪り聞いて、Java scriptを少しだけかじった。(彼はエンジニアだった)
そうやって、思いを伝えることはできずに、11月は過ぎて彼は私の前からいなくなった。きちんと失恋することもできない、不完全燃焼な恋であった。
そんなことを思い出した。
夕焼けとは、人を必要以上にセンチメンタルにするから良くない。
今でもUKロックは好きで、相変わらずデニムもはいているけれど、
たぶんしばらくはかかとの低い靴は履かないかな。