重荷をおろした話
はじめてセックスをした時、大袈裟でもなんでもなく「終わりだ」と思った。
だって私の欠けていたピースはすべて埋められて、完成してしまった。満たされた。
思えば、私がここまでしちめんどうくさいことや、辛いことに耐えて、多少人生が辛くても自分を騙し騙し生きて、とにかく少しでもマシな人間になろうとしていたのは、「自分はこのままじゃダメなんじゃないか」という危機感があったからだった。
だから偏差値の高い大学にも行ったし、良い会社にも入った。美人ではないけれどメイクと服でそれなりに見えるようにもしてきた。
卑屈になっているのは否めないのだけど、私はマイナスだ、という強いコンプレックスがすべての原動力だったので。
でも、もうそれも終わり。
セックスと最低限生活できるだけのお金があれば、他になにがいるのだろうと思ってしまう。
反対にここまで私を負のエネルギーで支えてくれた私の処女よ。
ずっと邪魔だと思っていた。こんなものは早く捨ててしまいたい。捨ててしまえば私はもっと速く、高く飛べると思っていた。それは半分合っていたし、間違ってもいた。確かに処女は重荷だったし、面倒だったけれど、だからこそ私は自分に負けないための武器を身につけていた。
でもまあ、人間なんて業の深い生き物なので次の火種もすぐに見つかるのだろう。