人知を超えた何か
小さい頃、田舎に住んでいる時、
深い森や零れるような星空や、そびえ立つ山や風の音、広い広い空が、好きであると同時にこわくもあった。
べつに自然災害に見舞われたわけではないのだけれど、森は飲み込まれそう、森の奥深くには、恐ろしい何かが住んでいそうで、びっしりと詰まった星空は、広くてずっとみているとその中に落ちていくような感じがした。
変な話である。
星空の中に落ちるはずはないし、民家の近い森に恐ろしい獣なんかいない。それなのに、私はいま宇宙に剥き出しの更地に立っていて、自然が私を生かしも殺しもするのだと幼いながらに思っていた。
大人になって、東京に住むようになって、そんなことを忘れていた。街はレプリカ。
どこにでも人がいて、隙間がぜんぜんない。
空は狭くて、こわい森もない。
時々自分の人生が偽物なんじゃないかと考えてしまう。
貸した金は
戻ってこないのが世の常だよな。
それでいい。
でも、私は器が小さくてうじうじ考えてしまうから人にはぜったいやらないようにしよう。
もしも
いま、東京を離れて田舎に戻ったならば、
ずっと東京に憧れて暮らすのだろう。
トレンドやファッション、欲しい物はすぐに手に入るから、最早心から欲しいものがない、そんな日々。
街それぞれに色があって、たくさんのキラキラしたひとがいて、カルチャーや芸術がたくさんある。
美味しいご飯屋さんや、おしゃれなカフェも無数にある。
きっと、ずっと後悔するんだろう。
不安で眠れない夜に
ガラスのうちゅうせんで、宇宙を旅するドキュメンタリーを見ていた。
いまどきのCGはとてもすごくて、
色々な太陽系の星々を精緻に再現していた。
火星は地球の砂漠みたいで、ここに人間が住めるようになるのも、確かに遠くはないのかもなと思った。
太陽系は、宇宙の中のほんの一部で、宇宙には太陽系みたいな惑星軍が無数にあるのだという。
気が遠くなるような話である。