忘れらんないよ
あの人に会えなくなって1ヶ月程度経つ。
ふとした瞬間、そうだ、あれは都内某所に8時に呼び出されて朝7時に家を出た日だ。
空が最近見た中でいちばん青くて、緑の葉っぱの隙間から溢れる光、深い森で聞くような安らかな風の音、その中駅までの道を走り抜けて行った。
思い出してしまった。
夜道を歩いている時の横顔や、良い匂い。
そうだ、あの人はいつも良い匂いがした。
真夏の日の風みたいな、そんな。
泣いている私につられて、ちょっと泣きそうになっている顔や、疲れ切って項垂れている肩、ほんとうは心配だったんだ、怒っている時も。いつも真っ直ぐに気持ちを伝えてくる眼差しで、分かった。
全て終わった後に、気づく。
いつだってそうだ。気付いた時は後の祭り。
もう会えない。
最後にさよならと言った午前2時をそっと心にしまった。